熱伝導逆解析

板の表面の熱流速を板の裏側の温度変化から推定するケースが良くある。熱伝導現象が拡散現象であるため,計測情報の遅れや減衰が生じる。このため,サンプリング周期を適切に選択しないと計測データのノイズによって計算が不安定になったり,遅れによって熱流速の急激な変化を見落とすことがある。しかしながら,実験する際には出来るだけサンプリング周期をできるだけ短くして急激な変化にも対応しておく方が無難である。なぜなら,最初から現象の変化速度は知らないからである(知らないから実験する)。そうしておけば後からデータは省いたり,適当なノイズ処理を行うことで,推定精度を調整することができる。適正なサンプリング周期は,Fo数を0.06から安定な解が得られるまで大きくしていくことで容易に得られる。推定結果の良し悪しの判定は,熱流速が一定となる状態(多くは初期状態)で推定される熱流速ノイズの大きさと推定された熱流速との相対比から判断すると良い。